意外と思われるかもしれないが、千代田区も「高級賃貸マンション」が存在する街だ。
もちろんそこにも理由があることは言うまでもないが、今回は天国のピーター・フォークさんに捧げたいぐらい、刑事コロンボばりに結論を言ってしまおう。
千代田区は、その周辺も含めてまさに「男の街」だ。
ひとつは神保町――古本とカレーの街。これだけで男だ。
お隣にはすぐ東京ドームと後楽園ホールがある。野球と格闘技、まさに男のスポーツである。
御茶ノ水にはギターなど楽器専門店が立ち並ぶ。男なら一度はエレキギターに憧れることだろう。
秋葉原は、もちろん電気街だ。男なら家電に詳しくないと、引っ越しの時にナメられる。
九段下駅から少し歩けば、千鳥が淵、月の水面、振り向けば 澄んだ空に光る玉ねぎ。
このフレーズを聞いて涙するのは、30代以降の男に違いない。恋がつのるほどに悲しくなるのは、もはやペンフレンドではなく、FACEBOOK友達かもしれないが。
そんなことはともかく千代田区には「男のロマン」が溢れている……と思われていたが、時は移り、現在の千代田区は「女の子の夢」を叶える街へと変貌した。
スタートは某ディスカウントストアの上にある劇場である。人気が出ると、次はTDCホールで総選挙、日本武道館でじゃんけん大会、目指すは東京ドームでのコンサート。千代田区だけで、女の子の夢はどんどん膨らむ一方だ。
だが、アイドル・芸能に詳しい人気ライター吉田豪さんは、日本のアイドル文化について、とあるテレビ番組で以下のように説明していた。
「日本のアイドルは、最初から出来上がっているものではなく、ファンが育てていくものだ」
自分もメディアの仕事をしていて思うが、我々の仕事は趣味の延長線上にあるようなものだ。総選挙が行われれば、神保町にある出版社に戻り、不眠不休で原稿を書く。雑誌や映像を編集する。終わらない夜に、終わらないメロディーを奏でながら。
自宅が遠いとなると、もちろん家に帰ることなどできないかもしれない。二人で一緒に過ごしたいけれど、僕にはやることがある。だからこそ、千代田区の高級マンションなのだ。
何より、目の前の女の子を守り、育てていくために、戦士には休息の場が必要だと思う。
それが愛じゃなくても、恋じゃなくても、君を離しはしない。自分の作った雑誌の編集長にアイドルが就任したとしても、そんなことは気にするべきではない。
千代田区に住むことは、ほんの小さな男の生き様なのである。

ライター 亀池聖二郎

 

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